11月26日オミクロン株についてWHOより発表がありました。11月22日にB.1.1.529系統ウイルスグループとして南アフリカで検出され、11月23日までに71標本を使って遺伝子の70%が確定されているようです。発症者では特別な症状が見られているわけではないようですが、重症化や感染拡大にどれほど影響があるかわかっていません。また一部は症状が無い人もいるようですが、世界中で情報収集と研究・評価が急ピッチで行われています。
どんな特徴があるの?
VOC(variants of concern)といわれる最上位の注意を払う変異株として、WHOは現在5つ指定しています。今回追加されたオミクロン株では、変異の数が多いことが特徴です。下の図は5つの変異株のスパイク蛋白の中で、変異によりアミノ酸が変わった場所を示しています。一番下のオミクロン株では他の4つより明らかに数が多く、35か所も確認されています(CoVariants websiteより)。
病原性はどうなの?
今の時点で、オミクロン株の感染しやすさや、オミクロン株へのワクチンの有効性についての詳細は明らかでありません。現地の研究チームを中心に既にその評価に取り掛かっているようです。
ただ、スパイク蛋白への変異の多さが病原性に関係する可能性は十分に考えられます。スパイク蛋白はウイルスが私たちの細胞に感染するときに必要な蛋白です。特に上の図で、背景がピンク色になっている部分は、RBDと呼ばれる部位で、ウイルスが細胞と直接触れ合う部分になります。ここだけで15か所と集中しています。
例えば、これまでに指摘されてきたこととして、501の部位の変異は感染力が増す可能性、484の部位の変異は免疫から逃れる力が増す可能性があります。このオミクロン株でも同じ部位を含めて変異が確認されています。これほどまでに多くの変異のある株は経験がなく、十分に警戒する必要があり、研究チームからの続報が待たれます。
世界に拡がっているの?
いま、アフリカでは南アフリカ共和国と、北の隣国のボツワナ共和国とで確認されていて、ベルギー、中国(香港)、イスラエルではアフリカからの入国者からの陽性者が確認されています(2021年11月26日付けECDCレポート)。各種報道ではさらに他の国での報告も出てきているようです。
南アフリカでは主要を占める株となっています(下図)が、今の南アフリカ国内の感染者数は比較的流行が落ち着いている時期のようです。ただ、やや流行に転じつつあるようにも見えますので、このオミクロン株を中心としてどこまで流行が拡大するのか注視する必要があります。
PCR検査での診断に影響はないの?
これについては、ほぼ問題ないことが確認されつつあります。PCR検査ではスパイク蛋白ではない部位を手掛かりとして検査をしています。海外と国内では異なるPCR試薬を使っていることがあり、国内の試薬でも確認されていくはずですが、影響はないことが推察されます。
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