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新型コロナ ― ワクチン後の免疫の出来方


CRNT法(中和抗体評価法)のデータも紹介しつつ、私たちでわかったことをまとめます。


新型コロナウイルスへのワクチンの効果は海外で確かめられていますが、日本人ではどうなのでしょうか。


ワクチンを打って、確実に抗体ができるの?


ワクチンを打つと、抗体の量はしっかりと増えます。

下の図は、私たちで行った、2つの研究結果を合わせて作ったグラフです。感染後には抗体ができることを前回示していました。今回、ファイザー社製のワクチン接種後を調べましたが、左側のグラフのように、ワクチンを打って2週間たつとほとんどの人が感染した人を凌ぐ抗体量が獲得されるのがわかりました。あまりに感染後の人たちが押しつぶされて見えますので、右側で枠線部分を拡大したグラフを置きました。

ワクチン接種者での中央値は2112 U/mLで、感染後で最も高かった人よりも高い値です。感染接種後の中央値(30.5 U/mL)と比べると約60倍です。

圧倒的な量の抗体をもたらしてくれるのがこのワクチンのようです。


ワクチンは、変異株にも有効なの?


変異株への効果はどうでしょうか。これは、中和抗体で評価しないとわかりません。

下の左側のグラフは、ワクチンを打っていない時期に従来株への中和抗体を示した人たちが、変異株への中和効果を持つかを確かめたデータです。B.1.1.7(いわゆる英国型)とB.1.351(いわゆる南アフリカ型)に、中和効果が落ちるのがわかります。感染阻止力50%を下回る人が半数ほどでした。

同じように、ワクチンを接種した人でも確かめてみました。それが下の右側のグラフです。パラパラと阻止力が落ちる人がいますが、全員が感染阻止力50%を下回ることはありませんでした。統計という計算手法で、細かく解析すると変異株で阻止力は低下していますが、最低ラインとして陽性の判断レベルは維持していました。

ワクチン接種後の抗体の出来かたになにか関係するの?

性別で少し反応が違うようです。下の図のように、男性と女性では、女性の方がワクチン接種後にできる抗体の量が多いことがわかりました。詳しく見ていくと、特に女性は若い人でより高くでる傾向がありました。


それとワクチンを接種した後にみられる副反応との関係もありました。副反応とは接種したこと自体による症状が、多くは私たちが免疫を作ろうという反応です。症状には大きくふたつあります。ひとつは、打ったところに出る症状で、注射部位の腫れや痛みなど局所症状と言います。もうひとつは、それ以外のところに出る症状で、発熱やだるさなどの全身症状です。ワクチンを打った後の全身症状がなかった人の抗体量は少ないことが確かめられました。


まとめ

抗体の量をみると高めの人や少なめの人がいますが、大切なことは、今回の私たちの調査では変異株への働きは維持されていたということです。

このワクチンで得られる抗体の量が基本的に極めて多いために、少し変異株への効果が落ちたとしても十分な働きを保っているのではないかと考えられます。



※ 以下のプレプリントで公開されている内容を紹介しています。

medRxiv 2021.05.25.21257828; doi: https://doi.org/10.1101/2021.05.25.21257828

medRxiv 2021.05.26.21257884; doi: https://doi.org/10.1101/2021.05.26.21257884


※ プレプリントとは、査読を終えていない論文投稿中の内容が公開されているものですので、関連内容が最終的に論文化されるまでに変わりうる内容を含んでいます。


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